失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「…やってるのか…お前」
ヤツは愕然としたように呟いた
声が少し震えていた
「答えろ?」
「…答えたら…僕を許してくれるの
か…?」
僕は絞り出すように答えた
「クスリなんて…あってもなくても
もう…地獄なんだよ…」
胸が張り裂けそうな悲しみが
襲ってきた
いまお前に正しいことを言われても
僕は救われることがないんだ
「じゃあ…」
僕は引きつるように息をすった
「やめたら…死なせてくれるの?
替わりに兄貴を探してくれるの?
兄貴の居場所になってくれるの?
うちの親を一生慰めてくれるの?」
「…お…おまえ」
ヤツの声がうわずっていた
「生きてるだけで…もう…精一杯な
んだよ…死ぬわけに…いかないんだ
よ…」
僕はテーブルの上で両手の拳を
震えるほど握りしめていた