失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




でも結局僕は

その夜も男に抱かれた

身体の中に巣喰ってる焦燥が

僕を勝手に連れて行った

仕事ってクスリ売ってたんだ

なんでそんなことしてんだろ

こいつも普通には暮らせないんだな

僕のことも好きとか言って

結局カモなのかも

最初は弱いのでガードを下げて

離れなくなってきたところで

スピードかなんかで完全に

抜けられないようにされて…



「ああっ!ああっ!だめっ」

「もっと狂ってよ…もっと」

「して…してって…ねぇ…じらさな

いで!」

「いい顔してるよ…たまんないよ…

もっと声出して…」



もともと狂った身体だから

自分でも驚くほど

この男に踊らされていく

あの人の責めが静だとしたら

この男は動

知的なんじゃない

動物みたいな本能で快楽を

探し当てる

だから“ニオイ”なんだ

犬みたいな嗅覚で



クスリの入り込む余地までも

きっと心の隙もニオイでわかるんだ

僕をあの雑踏で見つけたように



でもその金も

自分の薬代に消えちゃうんだろうな



「いいこと…いいの…してやるよ…

お前…かわいいよ…もっと気持ちよ

くしてやるよ」

そういうとそいつは僕の足を広げた

モウロウとした意識の中で

何かが粘膜の中に押し込まれるのを

感じた

「なに…?」

「溶けるよ…これやると…」

「ああっ!」

すぐに男のモノでそこをふさがれた

少し経つと僕は初めて

この男への嫌悪感が

なくなってることに気づいた

もっと抱きしめられたい

夢中で男にすがりついた

「ほら…いいだろ?」

「もっと抱いて…キツく抱いて…」

男とキスした

頭の中が白くなった

















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