失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「して…ないよ…」
僕は唐突な男の疑心暗鬼に
戸惑いながら答えた
「じゃあなんなんだよ…誰から仕込
まれたらこうなるんだよ」
さっきまでの共鳴が
あっけなく冷めていく
「なんで?なんで…そんなこと聞く
の?」
男は変な顔になっていた
目の奥に恐怖が宿っているような
おかしな目付き
怖い…どうかしてる
「お前…俺をハメに来たのか?…誰
に頼まれたんだよ…俺が破滅するの
を見たいのかよ?」
「どうしたの?変だ…よ?疑われる
ようなこと…してないよ…いきなり
こんな…今までこんなこと言わなか
ったじゃない」
僕はわけがわからなくて
泣きそうになりながら
必死に男をなだめた
だが男の妄想はだんだんひどく
非現実的になり
破綻してきてさえいた