失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



支えも

希望も

信念すら失って

兄という

生きる意味が消えて

消えたのか消えていないのかさえ

不確かで




その亀裂にクスリ

空虚をオーガズム

で埋めて




本当に失いたいのは意識

この人生

確かなものが何もない

この世界




一瞬のエクスタシーのために

膨大な犠牲と苦痛を支払う

この世界自体が麻薬

生きていくこと自体が

ジャンキー




だが

死ぬことも奪われてる

兄のために

僕は生きなくてはならない

兄の帰る場所は

僕…だか…ら

初めのころは疑いのなかった

そのことが

長引けば長引けくほど

次第に壊れてくる

僕以外に…誰か…兄と…

兄は本当は…僕なんか…




そうしたら

生きていくことすら

意味がないんだ




でも

意味がないかあるか

それすら

不確かなこの有り様は

自己不信と疑心暗鬼の

深い暗い樹海

磁針は乱れ

行く先も帰る道もない

絶望も希望も道連れにはならない




なのに僕は

弱すぎ…る…

クスリがキレた

もうだめ

戻れない




朝からアルコールを飲む

飲みながら

泣いて




意識がなくなる

明るく晴れた

日曜日に





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