失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】




でもこれだけは言える

「母さん…変だよこれ…兄貴は僕に

黙って居なくなったりしないよ…」

そう

兄は僕に約束した

僕を支えるって

「母さんだって…兄貴が思い詰めて

いるように…感じてた?」

母は黙って首を横に振った

そう

いなくなる前の兄に僕は

何か異変を感じていた?

何もない

平穏な大事な日常を

二人でかみしめていたんだ




あるわけがない

こんなこと

兄貴がするわけない

だって

僕たちは…!



「母さん…親父に連絡して…それか

ら…警察に行く」

母はハッと僕を見た

「そうね…お兄ちゃん…こんなこと

絶対しない」

母は少し正気に戻った顔になり

急いで携帯をかけ始めた




その時

全身に鳥肌が立った

じゃあなんで

こんな手紙がある…んだ?

それ以前にあの時のメール

そして研究所に送られたメールは

誰も実在の兄を見ていないのだ

兄でなければ

一体誰が?

一体なんのために



凍りつくような恐怖が襲ってきた

黒い深い闇が見え

僕は3年ぶりに

パニックの発作を起こしていた







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