失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
警察からの帰り道
僕たち家族は
深い疲労と徒労感を抱いて
物も言えず歩いていた
《一般家出人》
それが兄の状況を示す
警察のくれた言葉だった
家出人には2つの種類がある
特異家出人と一般家出人だ
特異家出人は事件性のある
失踪も含む家出
何らかの事件に巻き込まれた…とか
書き置きも動機もない行方不明や
自殺の危険性があるものなどで
日本では毎年9万人の家出人が
警察に新たに登録される
ただ捜査はその中の一部にしか
手が及ばない
一般家出人は
自分の意志で出ていったことから
捜査の対象にすらならない
ただ《生存確認》というのだけあり
何らかの関係でその失踪者が
警察の知るところとなった場合は
家族に知らせてくれるという
してくれることは
それだけだった