失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
いけにえ
それからしばらくして
狂宴は唐突に終了した
鬼の接待という仕事は終わり
僕は裸で血まみれのまま
床に放置された
性器を2本の針で
刺し貫かれたままで
客がいなくなったあと
少しして男が部屋に入ってきた
床に倒れている僕を見て
携帯ですぐに医者を呼んだ
もちろん組の医者だ
「生きてるな…?」
男は僕の顎をつかみ
自分の方を向かせた
僕はうっすら目を開けた
そしてわずかにうなずいた
「これか…噂の地獄責めってのは」
男は僕の股間の針を見つめていた
修羅場をくぐっているだろう男は
こんなものを見ても顔色ひとつ
変えなかった
だが男は不自然に視線を外した
「抜くと血が出る…医者に抜かせる
まだ我慢しろ」
男は僕の頭を撫でた
そんなこと初めてされた気がした
「お前のおかげで取り引きはまずま
ずだ…だが…思いの外…お前はあの
客に気に入られた」
男は倒れてる僕の隣の床に
膝を立てて座った
「お前も取り引きの商品になりそう
だ」
僕が聞いてるかどうかなど構わず
男は話していた