ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「お疲れ」


私の顔を見て人懐っこい笑顔で微笑む。

少し頬が赤いように見えるのはこの寒空で長い間待っていてくれたのかな。


「八木原くん……」


なんで、って思ってしまった。

それが表情に出てるかもって気づいて、慌てて笑顔を貼り付けた。


「お疲れさま。あの、八木原くんもお仕事で?」

「うん、仕事。メイちゃんがまだ残ってるって聞いてそれなら待ってようかなって」


ちょっとホッとしてしまった。

八木原くんがリアちゃんの作戦に乗って、二人を置いてマンションを出てきたんじゃないと知って。

私と二人っきりになるつもりで待ってたんじゃないと分かって。


「あ、そうなんだ。ごめんなさい、気がつかなくて」


きっとメールをくれてたんだろうなと思うと申し訳ない気持ちになった。

私が気まぐれに携帯を開かなかったせいで、八木原くんを外で待たせてしまった。


そしていつのまにか八木原くんの呼び方がヒナちゃんからメイちゃんに変わってる。


年上だからヒナちゃんはやめろって言われてたのに、結局ちゃん付けで呼んでることに変わりないじゃない。

だけど八木原くんならそれが許せちゃうから不思議だ。
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