ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「じゃ、行こうか。俺もう腹減ってー」

「あっ、と……」


並んで歩き出そうとしてふと気づいた。

このまま水嶋のマンションに向かっちゃダメなんじゃない?


それじゃリアちゃんの作戦が台無しになっちゃう。

私は作戦通りに行動しないと協力してることにならないんじゃない?


「何? どうした、忘れ物?」

「あ、忘れ物っていうか……。ちょ、ちょっと用を思い出して」


とっさに口にした言い訳はその中身を全然考えていなくて、当然のように「用って?」と聞き返されて言葉に詰まってしまう。


ああ、もう。

こういうの苦手なのに。


だけどこのままノコノコと二人でマンションに顔を出せばリアちゃんの怒りを買うことは必須だ。

それだけは避けたい。


せめて何も知らない八木原くんだけで行って欲しい。


足が鈍る私に、八木原くんは一瞬キョトンとした後、「ああ」と納得したように笑った。
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