ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
それから無駄に世間話をして八木原くんと別れた。

水嶋の話題に固執してるとも、それが原因で落ち込んでいるとも思われたくなくて。


すっかり身体が冷えてしまった八木原くんに最後は同情してしまって、「お茶でも飲んでく?」って言いかけたけれど、八木原くんにやんわりと制されてしまった。


「メイちゃんは簡単に俺を信用しすぎだよ」


お酒を飲みすぎてなくても私って隙だらけな女らしい。

でも結局、八木原くんはそんな私にこれ幸いと迫ってこないんだから、私の人を見る目も案外確かなんじゃないかと思う。


真っ暗な部屋にひとりでこたつにもぐり込んだ。

すぐに電気を点ける気分じゃなくてアロマキャンドルに火を灯す。


小瓶に入れたラッキービーンズをキャンドルにかざしてボーっとしていた。

ジェリービーンズは炎に反射して暖かい光を零している。


八木原くんみたいな人が私と付き合いたいなんて言ってくれること自体が、十分にラッキーなできごとなのかもしれない。


ただ気持ちがついてこないだけで。


焦っているときには状況は動かなかったりするのに、動きたくないと思っているときに限って周りは私を置いて加速していく。

八木原くんも、リアちゃんも、そして水嶋も。


そう思うと無性に寂しくなって、でも誰にも会いたくなくてこたつに丸くなった。
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