ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「でもなんで? あのとき言ってくれればよかったのに」


高校のときだって、特別仲良かったわけじゃないけど話す機会なんていくらでもあったのに。


「や、なんか照れくさいというか怒られるかと思ってさ」

「怒られる?」

「かなり可愛がってるぽかったし」

「うん、可愛かったよー。でも家では飼っちゃ駄目だって言われてたし。どうせ飼えなかったから」

「日向の可愛がってた犬を拾うなんてストーカーチックに思われるかもって思ってたんだよなー」

「なにそれ。水嶋が? すっごく意外」


水嶋にそんな繊細な心があるとは。

みんなの人気者でいつも輪の中心にいるような人だったのに。


想像できなくてクスクスと笑ってしまった。


「あんときはなんでもないことが恥ずかしかったりとかしねえ?」

「分かる。それはすっごい分かるよ」

「気があると思われたらどうしようとか」

「なにそれ。女子じゃん」


あんなに高校の頃の昔話をするのが嫌だったのに。

どうしてだろう、この時間がすっごく楽しい。
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