ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
私が駄目な人間だから。

だから仕方ないんだよ、と。


息が苦しくなってこの場から消え去りたいのに、足は地面に張り付いて動かないし、小西さんが立ち去る気配もない。


今度は水嶋の声が遠くで聞こえた。


「流されてばっかで満足?」って。


だけど顔を上げられない。

流されないで踏ん張る強さもない、私は。


小西さんは続けて私を侮辱するような言葉を並べていたけれどそれは耳に入ってこなかった。

ただ駄目な自分が真っ暗な川の真ん中で、ひとりぼっちで立たされているようで。

身体がどんどん冷えていくのを感じた。


「いい加減にしないと名誉毀損で訴えますよ」


冷めた水島の静かな声色が、闇の中で唯一色づいて聞こえてきた。

それで私は我に返った。


「なんだよ、浮気相手クン」


小西さんは赤い顔でかなり酔っているのが分かった。
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