ラッキービーンズ～ドン底から始まる恋～
「いってぇな、テメェ！　傷害罪で訴えんぞ！」


頬を押さえて大声を出す小西さんを、「よせ、お前が悪い」と制して光浦さんが立たせる。

何が起こったのか理解できずに茫然としていると光浦さんが初めて私に言葉をかけた。


「メイ。悪かったな」


たったそれだけ。

返事をすることもうなずくこともできずに立ち尽くす私を置いて、二人は呼んであったらしいタクシーに乗り込むと視界から去って行った。


「もう１発くらい殴っときゃよかったな」


水嶋が忌々しげに眉を寄せて拳をさすった。


水嶋が人を殴るなんて。

高校のときだって誰かと争ったり、喧嘩しているところなんて見たこともなかったのに。


「やめてよ」


とっさにそう口にしていた。

水嶋にそんな顔をさせているのは自分のせいなのだ。


「なんで」


水嶋はまだ機嫌が悪そうだった。
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