ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
可愛がってやるよ
水嶋は私のことを心配したのか当然のように同じ駅で降りてアパートまでついてきた。


あんなシーン見られたんだから当たり前か……。


見られたくなかったな、今さらそんな思いがよみがえってきてまた泣きたくなる。

あんな楽しい時間を過ごした後だっただけに。


八木原くんがしてくれたのと同じように階段を一緒に登って部屋のカギを開けて振り返った。


「送ってくれてありがとう」


だけど未だ不機嫌な顔をしたままの水嶋は私をぐいっと押しのけると勝手に部屋の中へと上がって行ってしまった。


「え、ちょっと……」


慌ててドアを閉めて後を追いかける。

家に上がられたのは二回目でそれほど抵抗はなかったけれど、何より今は一人になりたい気分だった。


水嶋はこの間と同じ位置にあぐらをかいてどっかりと座った。

どうやら居座るつもりらしい。


助けてもらった手前、邪険にもできなくてとりあえず紅茶を淹れてテーブルに出した。
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