ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「もう恋なんてしたくないんだよ……」


だけど勝手に始まっていく。

そう言っていたのは八木原くんだった。


――だから嫌だったんだよ。


逃げても逃げても無理やり向き合ってくる。

引っ張りまわされて一緒に笑って助けられて。


無理じゃん。

こんなの。好きにならない方がおかしい。


だけど私はそんなに強くない。

高すぎる壁を前に登ろうと手を出すことすらできない。


だから、嫌だったんだ。


「決めつけんなって言ったろ?」

「……え」

「もっと自分を可愛がってやれよ」

「……」


ドクン、と心臓が脈打ち始める。

この声を覚えてる。


もしかしてあのときも。

水嶋は私にそう言った……?
< 171 / 226 >

この作品をシェア

pagetop