ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
この瞬間が何よりも怖くて。

ずっと避けていた。


微かに身体が震える。

言ってしまえば好奇の目にさらされて、優等生だった自分像が壊れる気がして。


そんなものに価値はないのに。

膝の上で拳を握ってすっと息を吸い込んだ。


「婚約してたけどダメになっちゃった。だから結婚はしないよ」


さーっと波が引いていくように歓喜の空気がなくなった。

一瞬、時間が止まったみたいに。


質問してきたユミちゃんは可哀相なくらい瞳が泳いでいる。


「もう済んだことだから気にしないで」

「……そ、そっか~。なんかすごいエリートだって聞いたから興奮しちゃって」

「バカ、ユミッ。そんなん言わなくていいんだよっ!」


隣からアヤちゃんが慌ててツッコミを入れる。

そしてすぐに、「そういや竹ちゃんがさー」と違う話題を始めてくれた。
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