ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
周りが気を遣ってアヤちゃんの話題に切り替えてくれたのが分かる。

それを遮って自分の現状を笑い話にするまでの強さは持てなくて、ホッとしてる自分がいた。


バッグの中からそっとラッキービーンズを入れた小瓶を取り出した。

手のひらに隠すようにギュッと握る。


これは花嫁のブーケと同じ。

見つけた人に次の幸せが訪れる。


普通はそれが結婚なんだと思う。

だけど現実の私は結婚とはおよそ遠い位置にいるし、幸せと呼べるものは何も掴めていない。


それでもこのラッキービーンズが水嶋との出会いを運んでくれたんだと、私は思いたい。


「ヒナ、大丈夫? 私、全然知らなくて……」

「ごめんね。モモ。……知られるのが恥ずかしいって思ってたんだよ」

「なんで? そんなの私……」

「うん、ごめんね。モモ相手なのに変だよね」

「ヒナ?」

「変な私だった。この間まで」
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