ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「派遣で働いてるよ」

「えー、大変じゃん!」


仕事も、恋も失った可哀相な女。

そういうレッテルを貼られるのがどうしても嫌だった。


だから今、それが現実になって怖いし、この場から逃げ出したい思いでいっぱいだ。

だけど強く、強く。


手の中の小瓶を割れそうなくらいに強く握って、自分におまじないをかけた。


私はもう逃げ出さない。


「誰かいい人紹介してあげよっかー」

「ありがとう。でも大丈夫だから」

「あ、エリートじゃなきゃダメ? 歯医者さんとかどう?」

「そんなんじゃないけど……」

「ちょっとは妥協しなきゃダメだよー。身の丈にあった相手を選ばないと」

「あ、俺とかどう!?」

「壁谷、子供いるじゃん!」


身の丈にあった相手。

それはもっともな意見で、その理論からいうと水嶋は私とは釣り合ってない。


無理めな相手に無謀にも恋をしてしまった。
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