ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「これ、俺の彼女。高校の同級生」

「あらそう。はじめましてメイちゃん。ハヤタがお世話になってますー」

「は!? いえっ、こちらこそ」


ここでも彼女と紹介されたことに面食らって、会話がワンテンポ遅れた。

え? ほんとに私が水嶋の彼女?


そんな勘違いを起こしそうになる。

どこまでこの演技を続けるつもりなんだ、水嶋は。


そのまま可愛いお母さんに家に上げてもらって、水嶋の部屋まで通されてしまった。

家に上がるつもりなんてなかったのに。


水嶋もそれは想定外だったみたいで、「なんかごめんな。うちの母親マイペースな人だから」と少しバツが悪そうにしている。


「水嶋が彼女だなんて言うからじゃん」


私は唇を尖らせたまま水嶋のベッドに腰掛けた。

今は使われていないその部屋はベッドと机くらいしか家具がなく、壁にかけられたオモチャのバスケットゴールが唯一、水嶋らしさを残しているくらいだった。


「じゃあなんて言って欲しかった?」

「……」


ふっと意地悪な笑みでこちらを見られて、グッと黙り込んでしまった。
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