ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
水嶋も少しバツが悪そうに言った。


「乗っかっちゃえばこのまま日向が俺のものになるかなって」

「……」

「抱けば俺の彼女だよって言ったら、日向うなずいてたし」

「……」

「まさかあんな風に逃げられるとは想定外だったけど」


……最初からそんな風に思って抱いてくれたんだ。


遊びかもしれないってささくれだった気持ちが、綺麗に滑らかになっていくのが分かる。


「水嶋……」

「なんだよ」

「ごめんね?」

「全くな」

「……すごく大切なことだったのに、忘れててごめんね?」


いつのまにか首に回されていた腕は肩に下りていて、後ろから両腕で抱きしめられていた。


「こんなこと言うの都合いいかもしれないけど」

「……何?」

「水嶋が知ってた優等生の私じゃなくて、水嶋の前で泣いたダメな私が本当の私だよ」

「……うん」

「だから」


――水嶋に可愛がって欲しいって言ったのは紛れもない私の本心だったと思う。
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