ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
……だったら。


なかったことにできるんじゃない?


むしろ彼だって、一晩を過ごしたからって彼女面なんてされたくないと思うし。

あの外見なら相手には不自由しないだろうから、私をセフレにしようだなんて発想もないと思う。


だったらなかったことにした方がお互いのためだよねえ!?


一人、うんうんとうなずきながらこのまま帰ることに決めた。

マンションを出たらタクシーを呼んで、この場所がどこだかも忘れちゃおう。


この広い大都会でそうそう再会する偶然なんてあるわけない。

だってこの10年近く一度も出会わなかったんだから。


「忘れよう」


そう口に出して決意を新たに部屋のドアを開けた。
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