ラッキービーンズ～ドン底から始まる恋～

「おー水嶋。こっちこっち！」


苗字なんです、と言おうとする声を今林さんの大声が遮った。

そしてその呼ばれた苗字がごく最近聞き覚えのあるものだったから思わずピシリと固まってしまった。


……嘘！

なんで!?


別人だよね!?


ドキドキ加速する心音をなだめるために必死で自分にそう言い聞かせる。

だけどもしそうだったらと思うと入り口から入ってきたであろう、その人を確かめる勇気はなかった。


それどころか不自然にうつむいてしまう。


「きゃー、水嶋くんが来てくれるなんて珍しい～」


女の人の誰かが嬉しそうな声を上げた。


「普段から世話してやってる俺の力よ！」


自慢げにい言う今林さんに反応する声はなかった。


ただあたしはその間、取り分け終わったサラダのトングをそっとお皿に置いて静かに着席することしかできなかった。