ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
このまま私という存在に気づかないでいてくれればいい。

そしたら他の人と会話しているときにチラッと確認すればいい。


自分にそう言い聞かせながらバクバクと鳴る心臓を必死でなだめた。


だけど現実はそう甘くない。


「初めましてぇ~。私達、総務に新しく入った派遣でーす」


ガタンとリアちゃんがイスの音と立てて、立ち上がった気配がした。


声の感じからしてテンションが上がってるのが分かる。

だったら自分だけアピールすればいいのに。


リアちゃんは思ったよりもずっといい子だった。


「私は松田梨亜ですっ。で、こっちが日向芽生さん。よろしくお願いしまーす」


私の自己紹介までしてもらっちゃ顔を上げないわけにはいかない。

私はおそるおそる上目遣いでテーブルの向こうに立っているであろうその人へと顔を上げた。
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