ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
こんなとき「やめてください」ってキッパリ振り切れない。

おじさんが逆上したらどうしようって思うと怖くて抵抗できなくなる。


どうしよう。どうしよう。

頭の中がパニックになった。


おじさんが自分の方に私を引き寄せようと力を強めて、恐怖の感情がいっそう強くなる。

足をグッと踏みしめるけれど、おじさんへと倒れ込むのは時間の問題だった。


そんなとき、私の後ろから急に誰かの手が伸びておじさんの手首を掴んだ。

それはまるで救世主の。

少なくとも一瞬、私はそう思った。


「おじさん、これ俺のツレだからやめてくれる?」


だけど涼やかなその声が聞こえてきたとき、私はその声の主を理解して頭の中が真っ白になった。


「水嶋!?」
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