ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
痛む胃と、それでも帰りたくない気持ちを天秤にかけて。

私は駅前のコーヒーショップに向かうことに決めた。


週末の駅通りは若い子やサラリーマンで溢れかえっていて、もう終電も終わりかけだっていうのに人通りは絶えなかった。

その喧騒にどこかホッとしている自分がいる。


やっぱり帰らなくて良かった。

もう少しの間、私はひとりじゃない。


目指すコーヒーショップの明かりはもう見えているのに。

なかなかそこにたどりつくことができない。


「ひとりなの?」

「飲みに行こうよ」

「一緒にカラオケ行かない?」


赤い顔でふらふらとひとりで歩く女なんて格好のターゲットで。

ナンパ目的の男の人が次々に声をかけてくる。
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