ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「俺の名前だけじゃなく家まで忘れたんだ? 日向サンは」

「……」


……い、今のは完全な嫌味だよね!?


ドクドクと血液が体を巡るのを感じながら、気が遠くなりそうな自分を必死で保っていた。


「お……、怒ってる……よね?」

「日向サンは俺が怒ってないとでも思ってるんだ?」

「……」


こんな風に面と向かって誰かに責められる経験なんてほとんどなくて、どうしたらいいか分からない。

勝手に涙がじわっと浮かび上がってきて、私はそれを悟られたくなくて下を向いた。


「……怒ってないよ」

「……え?」

「べつに怒ってない」

「……う、うん」


どう見ても不機嫌にしか見えないその横顔を、思わずじっと見つめてしまった。
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