ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「忘れたんなら思い出させるだけ」

「え!?」


私が目を丸くして大きな声を出すと、水嶋はチラッとこちらを見て不敵に微笑んだ。


さっきとは違う意味で心臓がバクバク音をたてる。



……何それ!?

どういう意味!?


それきり水嶋はまたしゃべらなくなってしまい、タクシーはとうとう私のアパートの前まで着いてしまった。


嫌な予感がするからさっさとお金を払って降りようとバッグをまさぐっていると、水嶋がスッとお札を運転手さんへと渡してしまった。


「ちょ、待って! 私が払うから……!」

「運転手さんお釣りいいや」

「ハイありがとうございました」


初老の運転手さんはさっとお札をしまってしまい、追加で出した私のお金は受け取ってもらえなかった。
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