ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
言いたいこと……。

てめェふざけんなよ、的な?


私が黙ってしまうと水嶋は辺りをぐるりと見渡して、「家、どこ?」と訊いてきた。


「……え?」

「あのアパート?」

「う、うん。でも」

「なに?」

「あ、上がる、の……?」


おずおずと口にした途端、水嶋の眉間にクッとシワが寄ったから慌てて「こ、こっちです」と敬語で案内するハメになった。


水嶋はただの高校の同級生で部屋に上げる義理なんてないのに、なんで私の立場はこんなに低くなってしまったんだろう。

心の中で自問自答しながら自分の部屋の前まで行き、カギを開けて彼を中へと招き入れた。


「ふーん。キレイにしてんだな」


1Kのアパートは手狭ですぐに物でいっぱいになるから、誰も来る人がいなくても掃除はこまめにしてあった。
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