ラッキービーンズ～ドン底から始まる恋～

「あああ……」


なんのために番号を変えたのか分からない、という思いが無意識に口から出ると、水嶋はチラリと私を見ると携帯を差し出しながら言った。


「ヤギには教えて俺に教えないってことはないよな？　初対面でも」

「……」


初対面、を強調されて苦々しい思いで携帯を受け取る。


「……なんで？」

「なにが？」


若干口を尖らせ気味に呟くと、立っていた水嶋がしゃがんで私と視線を合わせてきた。

その距離の近さにうろたえる。


「水嶋はどうしたいの!?」


のけぞり気味になりながらも一番聞きたかったことを口に出すと、水嶋は一瞬キョトンとした。

それから「ああ」と納得したようにうなずくとニヤリと意地悪な笑みを浮かべながら、


「それはメイちゃん次第でしょ」


と耳元で囁くとついでに私の耳たぶをかぷりと甘噛みした。