ラッキービーンズ～ドン底から始まる恋～

……いや、あったけども！


一人で脳内ノリツッコミを繰り広げながら視線を泳がせる。

水嶋はそんな私を確認すると満足そうに微笑んで言った。


「偶然、タクシー乗り場で一緒になったんだよ。なっ、日向サン？」

「……え？　は、はい」

「待ち時間の間にちょっと話しただけだよ」

「なんだー。一緒に帰ったとか言うからビックリしたじゃないですかー」


八木原くんはホッとしたように笑ったけれど、誰よりもホッとしたのはきっと私だろう。


……脱力した。


「ちなみに日向サン俺とタメだから」

「マジっすか!?　俺、散々タメ口きいちゃいましたけど」

「改めろ」

「ですよね！　ごめんね、日向ちゃん」

「いや、それ全然改めてねーし」


ホッとすると同時にわざと意地悪されたんだと気づいて怒りがわいてきた。

きっと、これが初対面で知らんぷりした私に対する仕返しに違いない。