ラッキービーンズ～ドン底から始まる恋～

「私、仕事の途中なんで失礼しますね」

そう思うと急に強気に出ることができて、私は笑顔を浮かべて飲み終えたカップを持って軽く頭を下げた。


「あ、じゃあ日向さんさっきの話考えといてね」

「さっきの話ってなんだよ？」

「水嶋さんの家で今度皆で鍋やろうって話です」

「なんだそれ。聞いてねーし」

「さっき思いついて今言いました」


二人の掛け合いを背中で聞きつつ、また巻き込まれちゃたまんないと思ってそそくさとカフェコーナーを後にした。


コピー用紙は半分以上配って軽くなったはずなのに、台車がやけに重く感じる。


この会社は設備も福利厚生も整っているけど、やっぱり私には働きづらい場所かもしれないと思った。