ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「もっとさ、楽しむことに貪欲になれよ」

「……」


私がポカンとしていると、水嶋は私を置いてさっさと歩き出した。


楽しむ?

私が?


水嶋達と鍋パーティをすることが?


「……それって楽しいの?」


ポツリ呟いた独り言は冷たい夜の空気に溶けて。


「やっぱり意味分かんない……」


続けた言葉も少し先を歩く水嶋の背中には届かなかった。


だけど無性に寂しくてやるせない気持ちになったのは、

やっぱり季節が冬を迎えようとしているせいかもしれない。


ひとりぼっちの冬は寒い。
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