恋するカフ・リンクス
彼女の座るカウンターに置かれた
「石橋」という名前。
このひとは石橋さんっていうのか。
そんなこと思いながら黙っていると彼女のほうから言った。
「紫竹…にご用件ですか?」
シチク…?
あのひと紫竹って名前なのか?
「えっと、
昨日対応してくれた男性…」
アタシが確かめるように言うと彼女はにっこりと笑って
「紫竹ですね、
彼は16時半くらいに戻る予定なんですが」
なんだ、
せっかく返しにきたのに。
せっかく自転車飛ばしてきたのに。
せっかく高価なもんだからっていうから急いだのに。
「そうですか。
じゃいいです。
スミマセンでした」