君がいたから
*1
ブーッブーッブーッ―
携帯が震える。
画面にはメール受信の文字。
「着いたのかな?」
私はメールを開きながら呟く。
「おまたせー。今着いて、北口の前に車停めて、中でまってるから」
今日待ち合わせている男からのメールだった。
少し急ぎめでメールに書かれている場所に向かい、男の車を探す。
「こっちだよー」
黒い車の中で手を振りながらわりと若い男性が私に向かって話す。
「こんにちわ。お久しぶりですね」
私は車に乗りながら、笑顔を作り、わりと可愛い声で男に言う。
「本当だよ。ユリちゃんのこと好きでずっと会いたかったんだよ?けど最近メールくれないし、俺のこと忘れたのかと思ってたよー」
男が拗ねるように言う。
「ごめんなさい。高校が忙しくてなかなか連絡できなくて。けど、今日は時間いっぱいありますから」
私は申し訳なさそうに、相手の手に自分の手を重ねながら言った。
この男と付き合ってるわけじゃない。
簡単に言うと、援助交際の相手だ。
高校が忙しいっていうのは、嘘。
本当は他のお客さんと会ってたから。