美女か野獣か
走行中、凛斗が言葉を発する事もなく20分程度でメルセデスは、私のマンションに到着した。
すると倉庫に着いた時と同様に後部座席のドアを開けてくれた。
私は、お礼を言って名残惜しい気持ちを振り払ってメルセデスから降りた。
「清葉ちゃんってなにげにお嬢様なんだね?」
冬磨は、そう言ってマンションを見上げた。
「一応…ね?」
私は、曖昧に答えた。
すると冬磨は、意味ありげに笑い私に何かを差し出した。
何だろう?と思い受け取ると渡されたのは、一枚のメモ用紙。
メモ用紙には、丁寧な字で11個の数字が書かれていた。
「あの…これ…」
「それ凛斗の携番。何かあったら連絡して?」
冬磨は、それだけ言うと車に乗り込んだ。
そして冬磨は「またね?」と意味ありげな言葉を残しメルセデスを発進させた。
凛斗は、最後まで目を開ける事は無く…
私は、だんだん小さくなっていくメルセデスの赤いテールランプをその光りが見えなくなるまで見つめていた。