コイザクラ―初恋―
「これ、向けてもらえますか?こっちに」
その子はよたよたと小さなカバンからハンディタイプの小さいビデオカメラを取り出した。
見ず知らずの女の子からこんな風に頼まれるなんて、そうないから、俺は何かと緊張してたけど。
ビデオを出した瞬間気が抜けた。
「え・・これ?」
「はい」
「これを、・・・君に?」
“君”なんてヤラシイおっさんみたいでなんか気に障るけど、桜の木の下でスタンバイする女の子には特にどうでもいいのか。
「もういいの?」
「はい、お願いします」
「ん」
スイッチを押すと画面の枠が赤くなる。
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