名も無き恋【短編】
「ミャー!ミャー!!」


「ごめん…どうしても飼えないんだ…友達とかにも頼んだんだけど…ごめんな…」



「ミャー、ミャー!」



「偽善者だ、って思ってるよなぁ…?」



「ミャー!ミャー!!」



「静かにして、ねぇ?」



「ミャー!ミャー!!ミャーー!!」



「保護施設にだけは行くなよ?運が悪いと殺される。きっとな、俺より数倍も猫好きの優しい人が拾ってくれるから。お前は可愛いから大丈夫だ」


あの人はそう言って、

お別れだよ、と言わんばかりに

私の頭を撫でました。


それでもまだ、

私は叫び続けました。



いやだよ!

はなれたくないよ!

私には、あなたしかいないよ!



私の下品で必死な鳴き声も虚しく、

彼は腹を決めたように
パンを置いてすっと立ち上がると、

もの哀しさを語る背中を見せながら
去ってゆきました。




それが


私の中のあの人の、


最後の姿でした。
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