名も無き恋【短編】
「おい、おまえ、どうしたんだ?ずぶ濡れじゃねえか」



黒い学ラン姿のその人は、

短髪に、

まんまる二重の持ち主。


賢そうというよりは、

人当たりの良さそうな顔立ち。


少なくとも私はこの時、

警戒心というアンテナを切り詰めて張ることはありませんでした。



「寒そうだな、これで体拭くか?」



彼はそう言って、

大きな黒い肩掛けかばんの中から
わざわざフェイスタオルを取り出してくれました。



「なんでこんなとこに居るの?せめて、あそこで雨宿りすればいいのに…」
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