手を繋ごう―瞳を開いて私を見て―【完】
「会いたいの…っ…」



涙が冷たい雨に混じる。



「海都に会いたいんだよ…っ…」



私は涙も拭わずに、川のように水が流れる坂道に膝から崩れた。

愛してくれなくても良い。

でも、会いたい時に会える距離が大好きだった、あの頃に帰りたい。

…お願い…。

ポケットから携帯を出すと、雨のせいか、壊れて電源が入らない。



「海都ぉーーっ゛!!」



もう、今朝の香水の匂いは消え去っていた。

嫌なのは、今の間抜けな自分。

嫌われても。

追い掛けたい。

嫌われても。

私は好きだよ。

だから、私の叫びに気付いて。





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