手を繋ごう―瞳を開いて私を見て―【完】
けど、ここで話してるのも、周りの迷惑になる。

私は仁志の手を握り、改札へと向かった。

改札を抜け、階段を上がればホームに出る。



「ジュース代だけでも、出させてくれる?」



「まぁ。それだけなら」



「交渉成立!」



心の穴は埋ったのではなく、板で塞がれたように、その場だけの明るさが取り戻せていた。

突風が吹いたら、板は飛びそう。

けど、仁志が風避けになってくれてる気がした。



「仁志って、海都のお父さんと、ちょっと似てる」



「おじさんに比べたら、まだケツが青い」



「そりゃあね」



否定しなかった私に、仁志の睨みが飛んで来た。
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