手を繋ごう―瞳を開いて私を見て―【完】
【K】失った大きな愛情
「汚なっ…」
月が照らす部屋。
押し掛けて来た吏良を案内して来た親父が、室内を見るなりそう言った。
「萌が片付けてくれねぇし、仕方ねぇか」
「……は?」
…今、何て言った?
“萌が片付けてくれねぇし”?
「気付かなかったのか。この部屋の掃除は、2年は確実に萌がやってた」
俺の疑問を解いた親父は、脱ぎ散らかされた服を持ち、無言で出て行く。
…ジーパン…まぁ良いか。
ベッドから起き上がると、吏良は閉まった扉に「いつ見てもカッケー」と、呟く。
…その遺伝子、俺にも流れてるけど。