手を繋ごう―瞳を開いて私を見て―【完】
「萌ね、私たちの前で無理して笑ってた。涙を誰を前にしても見せなかった。
萌の笑顔、海都がちゃんと返しなさいよ!」



「かえ…っ」



“返しなさい”と言われても、どうすればわからず、聞き返そうとした俺の言葉を遮る、ガチャッて音。

いつもの呼び鈴もなく入って来たのはメグで、俺と母親である遥さんにも目をくれず、リビングに飛び込んだ。



「さすが空さーんっ!お願い、セミを追い出してぇ゛ーッ!!;;」



虫嫌いのメグらしく、親父に泣き付いてる。

遥さんは、「あ、窓を閉め忘れた…」と、口を手で押さえて、何故か悔しがってる。
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