手を繋ごう―瞳を開いて私を見て―【完】
注意を払いながらセミを掴み、窓の外へと逃がすと、やっと部屋の様子が目に入った。

人形やぬいぐるみはなく、本ばかりになった部屋。

変わらないのは、俺の部屋にもあるコルクボード。

テレビ台の隅にも、白い写真立て。

俺が小学校を卒業する時の写真。

5年生しか参加しないのに、親父たちと来てたから、一緒に撮った。

中学の卒業式でも。

写真立てを元に戻すと、ヒューッと風が吹き、ローテーブルにあった教科書が開いた。



「……俺?」



そこには、二つに破られた写真。

俺と、一度だけ抱いた事のある女と歩いてる様子が撮られてた。
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