手を繋ごう―瞳を開いて私を見て―【完】
入江が俺の隣に座り、「情けないなぁ」と洩らす。



「私はね、高梨がハキハキした男だから、友達で居やすかったの。なのに何で、最近の高梨はダメ男?」



「…俺かに聞くな」



返す言葉はなくて。

ため息だけを吐き続け、無駄な時間を過ごす。



「お前、36の彼氏は良いのかよ」



「年は言わないで!保健医の名前、知ってるくせに」



「赤石生ーアカイシセイー」



「うん…」



夕陽が暮れ始めた頃、俺たちの間の会話もなくなり、気分も沈みかけ。

ーーピリリリリ…ッ

そんな時、静寂を裂くような着信音が聴こえた。
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