恋する! マトリョーシカ


「あの、名前……」

 高橋先生の戸惑いがちな声に、ハッと我に返った。

「あ、ご……ごめんなさい。
 鈴木です」

 慌てて答えれば、高橋先生はふんわり微笑んだ。


 ああ、私ったら。
 なんて恐ろしいことを考えていたのでしょう。

 この目の前の清らかで美しいひとが、あんな野獣に食われるなんて有り得ない。
 絶対に有り得ないのです。


「鈴木さん。
 無理なダイエットしてない?」

 そう聞かれて、あまりに図星すぎて顔がカァーッと熱くなる。

「やっぱりね」

 言って高橋先生は、ふぅとため息をついた。


 あの、あまりこういうデリケートな話は、そこの野犬に聞かれたくないのですけれど。

 チラリと視線をやれば、野犬と目が合った。
 キョトンとしていた野犬は、慌てて変な笑みを浮かべる。

 気持ち悪い……


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