恋する! マトリョーシカ


「落ち着けって。
 お前、俺に半裸状態で部活に戻れと?」

「ああ、そっか。
 着替えをお持ちではないのですか?」

「なんなんだよその言葉使い。
 もしかして、それ素?」

 野犬は可笑しそうに笑った。

 ああ、笑顔は素敵かもしれない。
 決してイケメンではないけれど。


「こんなもんぐらい別にいいって。
 洗濯だって俺がやる訳じゃねぇし。
 母親だし?」

「でも、でも……
 汚いじゃないですか」

「きたねぇかなぁ。
 俺の部屋のがもっときたねぇし」

 また野犬はケラケラと笑う。
 どうやら冗談を言ったつもりらしい。

 巧くもないし面白くもないし、クソさぶい。

 でも……
 野犬は野犬でも、
 大らかで優しい野犬だなぁと思った。


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