恋する! マトリョーシカ


 マ・マ・マ・マトリョーシカ?
 あのロシアの郷土玩具、木製のお人形?
 首しかくびれていない、あれですかぁ?

 
「先輩、それ悪口です!
 レベルでいうと、
 健康診断の結果の、
 『あなたは太り気味です。
  バランスの良い食事と、
  適度な運動を心掛けましょう』
 ぐらいの悪口です!」

 頭が真っ白になり、怒り任せに捲し立てれば、先輩は、

「いやそれ、悪口じゃねぇよな?
 物理的データを元に
 お前の身体のこと気遣ってるよな?
 機械的ではあるけれども」

 至って冷静に返してきた。

「本当に可愛いって」

 そして再び、そんなバカみたいな見え透いた嘘を、平然と口にする。


「そんなの、嘘臭すぎて全然嬉しくないですよ」

 あまりの怒りに、全身にパワーがみなぎってきた。
 うん、今なら帰れそう。

「私、帰ります」

 言って、足をベッドから下して立ち上がろうとした。


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