恋する! マトリョーシカ
翌日。
朝教室に入るなり、クラスメートの広恵ちゃんが、血相変えて私の元へやって来た。
「ちょっとぉ。
ビッグニュースよ、ビッグニュース!
遊川先輩と姉崎先輩、先月別れてたんだってぇ!」
「ええ?
ほんとぉ?」
わざとらしく驚いて見せた。
そして、姉崎先輩は昨日をもちまして、私の彼氏なのです。
でもそんなこと、口が裂けても言えない。
あれだけ皆に、『私、面食いなの。絶対超イケメン彼氏をゲットするんだから!』などと豪語した手前、あんな、イケメンとは程遠い厳つい野犬が彼氏だなどと、とてもじゃないけど言えやしない。
いや、絶対に公言はしない。
先輩にもちゃんと口止めしておいたし、その辺も抜かりはない。
「ねねね、チャンスじゃない?」
広恵ちゃんは悪戯っぽく微笑んで言う。
「ん? 何が?」
何のことやらさっぱりわからなくて、聞き返した。