恋する! マトリョーシカ


 だんだんムカムカしてきた。
 繋いでいる姉崎先輩の手が、大きくてゴツゴツしていて憎たらしい。

 ぶんぶん上下に振って解こうとしてみた。
 が、姉崎先輩はしかと握りしめたまま、頑として離そうとはしなかった。



「何やってんだよ?」

 けれど、そう言ってようやく私を見てくれた。

 蔑むような冷ややかな眼差しだったけれど、きゅんと胸が小さな音を鳴らした。


 やっぱり私は、先輩のことが大好きなんだなぁ、と嫌でも自覚する。


 無意識的にうっとり眺めていたら、

「離さねぇよ?
 お前とどっか繋がってねぇと、俺、寂しくて死ぬ」

 その不機嫌顔にはとんでもなく似合わない甘い言葉を、サラリと何でもないことのように吐いて、再び顔をそむけて前を向く。


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