恋する! マトリョーシカ
何という反則技。
不意打ちとは卑怯な。
その上、甘さでしょっぱさを誤魔化すなんて狡いじゃないですか。
先輩は私より二つ歳食ってる分、こういう時の対処法を心得ているのだ。
ふて腐れているような、照れているような、何を考えているかさっぱりわからない横顔を、ブウたれて見上げていると、
「良かったな、痩せて」
ポトンとそんな言葉を落として、ゆっくりとこちらに視線を戻す。
その顔は、柔らかい笑みを浮かべていて。
この人、こんな優しい顔もするんだ、と思った。
やればできるじゃない、姉崎くん。